Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
今年度は、教師へのヒアリング調査と授業観察を実施した。具体的には、2005年11月から12月にかけて行われた高知県のA中学校における性教育の授業について授業観察を実施した。観察に赴けなかった授業回についてはビデオ録画を依頼し、それをもとに授業内容と教師・生徒の様子を分析し考察した。A中学校における性教育は、1年生から3年生までの3年間の人権学習として計画されており、総合的な学習の時間に位置づけられている。2名の教員が中心となりつつ、学年を担任する教員集団によって検討されたものである。また、道徳や保健などの他教科においても、ある程度関連づけられた授業が行われている。授業後のヒアリングでは、(1)性への関心や性知識・経験等の点で多様な状況にある生徒の、どこに焦点を当てるのか判断が難しいこと、(2)資料として、身近なデータを扱うことが生徒の関心を得るのに効果的であること、(3)教師の思いにもとづいたメッセージに対しては私語がなく、真摯に耳を傾けていることから、授業で何を伝えたいのかを明らかにすることが必要であること、などが挙げられた。ジェンダーの公正や平等の学習との関係については、教員自身はジェンダーの問題に関心を持っていたものの、性教育の授業計画や内容に明確に現れていたとはいえず、課題といえる。性教育においては、性の社会的問題(望まない妊娠やレイプ、買春、性の商品化など)をとりあげることによって、否定的な印象を与えることに終始する可能性もある。こうした内容をどのように扱うのか、ジェンダーの視点から、学習の系統性と継続性を含めて活発な議論が求められる。最後に、性教育に関する研修機会の充実の必要性を指摘する。実施した授業のふりかえりや話し合い、評価を行い、専門家からアドバイスを得られる場も必要である。