Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は、従来「小袖類」として一括して議論される傾向にある小袖・袷・単物・帷子など、小袖を典型として類似する外形を備えた服飾群、すなわち小袖型服飾を個別に細分して扱い、歴史的変遷を視野に入れつつ、室町・桃山期における基礎的な美的特質を服飾ごとに抽出することを目的としている。室町・桃山時代の記録日記類や文書など、同時代の文献資料を可能な限り猟渉し、小袖型服飾各類の記事を拾い出し、それらの色彩および装飾や材質についてのデータを集積した。また、染織品の現存遺例の調査や、画中服飾資料として服飾を描いた絵画の調査を行い、染織技術や服飾に関するデータの集積を行った。文献資料から得られたデータに分析を加えた結果、小袖・袷・単物と帷子・湯帷子との間では、およそ15世紀まででは画然とした相違があったが、16世紀に入って特に中頃を過ぎると、相違が少なくなり、更に17世紀以降になると、ほとんど同化する道を辿ることが判明した。本年度は特に帷子に焦点を絞って、その材質の変遷を論文としてまとめ、『国立歴史民俗博物館研究報告』125集(2006.3)に発表した。以下、帷子の材質の変遷について、概略を記す。15世紀においてはまず麻の布(布は植物繊維の織物をいう)であった。末期には絹物もあったとは言え、特殊な用途の、かつ一時的な摂取であったと考えられる。16世紀に入ると、布物の種類も増えると同時に、生絹という絹物も見られるようになる。そして、16世紀の末期ともなると、生絹は広範に普及をみせたが、他の絹物も使われるようになるのは、17世紀以降のことであった。
All 2006 2005
All Journal Article (2 results)
国立歴史民俗博物館研究報告 125
Pages: 69-99
120005748529
紫明 16号
Pages: 25-29