Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
空範疇は統語理論の説明力を高めてきた概念であるが、近年その存在自体の可否が再検証される事態となっている。本年度の研究ではtough構文における空演算子(以下OP)を取り上げ、その移動がもたらす理論的・経験的問題点を明らかにし、移動を用いない独自の分析を提案してきた。OP移動の論拠は、顕在的wh要素を含む構文とOP構文に見られる統語的平行性(OP島の効果、等)にある。しかし、Chomsky (1998,2001)の枠組み(以下MI/DbP)においては、OP島の効果はOP自体の存在ではなく、OPが持つ[+wh]素性によって引き起こされるとされた。この分析の帰結の一つは、OPの音韻的実在、すなわちOPの音韻素性の存在を仮定する必要がなくなったということである。そもそもOPが発音されないことを考慮すれば、この帰結は妥当なものと言えよう。ところが、この帰結はMI/DbPにおいて一つの理論的問題を引き起こす。というのは、MI/DbPにおいて移動は音韻素性を要求すると規定されているため、OPが音韻素性を持たないとすれば、OPの移動そのものが阻止されるからである。しかし、tough構文における不定詞節内の空所は長距離の認可が可能であり、OPの顕在的移動を示唆している。本研究においては、tough構文のOPについて以下の仮説を提案しその妥当性を主張している。(1)a.OPはそれと一致するvと主節のvが直接一致できる限りにおいて、元位置から移動しない。b.OPは主節のvが検索子(probe)となり主節主語および不定詞節のvと多重一致(Multiple Agree)することによって認可される。c.OPの長距離認可は主節のvとOPが基底生成される不定詞節のv、およびそれらの間に介在するCが互いに素性共有することによって仲介される。
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名古屋産業大学論集 7(未定)
110004814158
言葉と文学そして教育-米倉綽教授定年退職記念論文集 (未定)
JELS 22
Pages: 121-130
名舌屋産業大学論集 6
Pages: 85-93
110004627700