Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では、福建省西部革命根拠地における土地革命が、地域の社会構造、特に同族結合にいかに規定されていたのかを検討した。民国期における軍事勢力の割拠と圧迫は、大宗族による弱小宗族への負担の転嫁という形態をとって地域社会内部での矛盾を激化させた。共産党による土地革命が実施された際には、現状に強い不満をもつ人々、すなわち強力な隣人から圧迫される弱小宗族の族人、または内部分化の激しい宗族の貧困層など、従来の宗族的結合による社会秩序からの庇護が薄い人々が共産党の工作に応える可能性を有していた。それとは逆に、既得権益を比較的多く持つ有力宗族内部では、共産党による農民の組織化は困難であった。また、被抑圧層を動員するためには、信頼を獲得し易い同族出身の共産党員が、宗族組織の内部から族人を教化・組織化する必要があった。その一方で、紅軍の軍事力によりソビエト区に組み込まれた地区では、外部の力で支配層の排除と土地分配が実施されたため、土地革命の進展や階級意識の涵養が表面的なものに止まりがちであった。結論として、族田に対する貧困層の均分要求や、伝統的な宗族間・地域間対立に根ざす怨恨が共産党員にうまく誘導された場合、同族結合は、暴動の初期段階において大衆を立ち上がらせる"革命の連帯"要素となり得る側面を有した。他方、こうした条件が整わない場合、同族結合は革命の"桎梏"となったのである。共産党が提唱した階級原理による社会統合は被抑圧層の支持を得る一方、伝統的規範意識と深く結びついた同族結合も強い生命力を持ち続けていたのである。
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東洋学報 87巻2号
Pages: 183-211
120006516953