Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究の最終年度にあたって、これまでの研究活動を継続するとともに、あきらかになってきた研究の方向性の問題を精査し、今後の研究活動に発展的に継承されることを特に重点課題として活動を展開させた。具体的には、これまでの継続的作業として、欧州安全保障協機構における信頼醸成措置の発展過程について、ことに1990年前後の冷戦構造解消という国際政治の大きな転換期において、これが信頼醸成措置交渉の多国間プロセスと機構内部での位置づけ等にどのような影響を与えたかについて検証した。さらに、所属機関の戦略的経費なども活用しつつ、とくに米国がこのような交渉にいかなる外交意図、戦略を持って対応したかについて聞き取り調査などを行った。研究の進展とともに、本研究が、従来の信頼醸成措置概念にのみ依拠した概念枠組みで検討を行うことの限界も明らかになり、また、冷戦後十数年を経て国際政治状況が激変する中で、新たな役割を与えられつつある地域的枠組みをめぐる理論的諸研究の進展を加味しつつ、現在、今後の国際政治学の理論的検証に耐えられる、あるいは、それに積極的に寄与しうる視角を導入することに重要性も明確になった。同時に、信頼醸成措置概念が、単なる一時期、一定地域の単発的事例ではなく、より総合的に国際安全保障に重要なインプリケーションを与えうるツールであることを確認した。したがって、本年度は当初計画のような、論文発表等で一定の結論を導き出すのではなく、今後、2-3年程度の新たな研究枠組みの構想を固めることに全力を傾けた。その結果、地域枠組みにおける複合的プロセスとして信頼醸成措置をとらえ直すとの方向性を得た。その基礎的作業は、3年間にわたる本研究によってほぼ確立されており、今後はこれを活用し、直ちに新たな視角からこれを検討、発表等の積極的活動につなげていきたい。