Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本年は、金属ポルフィリン環状二量体を用いたキラルフラーレンの識別について検討した。ポルフィリン環状二量体の窒素原子上にメチル基を一つ導入したキラルなホストを光学分割し、一方のエナンチオマーにラセミのキラルフラーレンC_<76>を添加したところ、フラーレンの包接に伴い、メチル基由来の^1H NMRシグナルが分裂することを見いだした。光学活性HPLCを用いて得たC_<76>の光学活性なフラクションを用いた同様の測定との比較から、観測されたシグナルの分裂がC_<76>とホストの両エナンチオマー間の複合化によって形成される超分子的なジアステレオマーに由来することが明らかになった。すなわち、キラルN置換ポルフィリンを組み込んだポルフィリン環状二量体がフラーレンのキラルな骨格に対する初めてのNMRシフト試薬となることを見いだした。また、光学活性なC_<76>フラクションをプローブとして、金属ポルフィリン環状二量体内での、フラーレンの反応について検討した。C_<76>の光学活性なフラクションをアキシャルにメチル基を有するロジウム(III)ポルフィリンに包接後、可視光照射を行うと、メチル基とロジウム間の結合がラジカル的に切断するとともに、C_<76>由来のCDスペクトルの強度が減少し、C_<76>において何らかの化学変換がおこっていることが示唆された。C_<76>単独に対し可視光照射を行った場合、あるいはロジウムポルフィリン単独で可視光照射を行い、生成したロジウム(II)ポルフィリンとC_<76>を暗下で混合した場合には同様のCDスペクトル強度の減少は観測されず、可視光照射時におけるロジウムポルフィリンとC_<76>の近接が重要であることが分かった。
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Journal of the American Chemical Society 126
Pages: 6570-6571