Budget Amount *help |
¥3,500,000 (Direct Cost: ¥3,500,000)
Fiscal Year 2005: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 2003: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
これまでに,シンジオタクチックポリスチレン(s-PS)の結晶多形体間の相転移を,さまざまな条件下でシミュレーションし,結晶構造の変化と分子運動性との関係を詳細に解析してきた。今年度は,対象を他の高分子結晶にも広げ,これらの解析を引き続いて行うとともに,結晶構造の変化が,分子空隙におよぼす影響についても検討をすすめた。 1.シンジオタクチックポリスチレン(s-PS)について,転移過程における高分子側鎖の運動性の変化,構造因子の各ピークの変化,各原子間の距離の変化などを詳細に解析した。また,温度による構造転移が生ずることが実験的に観察されているt-1,4-ポリブタジエン(t-PBD)の結晶についても,検討を進めた。X線回折実験で決定されている結晶構造を初期構造とし,分子動力学(MD)シミュレーションを行ったが,実験で得られている構造を安定に再現することができなかった。シミュレーション条件やポテンシャル関数の見直しを含めて,再検討を進めている。 2.ポリメチルペンテン(PMP)結晶の主鎖は(7/2)ヘリックス構造をとっているが,上向きと下向きのヘリックスの配置には任意性がある。種々の配向秩序をもった結晶について,シミュレーションを行ったところ,鎖の配向秩序が異なる種々の結晶構造が再現された。すべてが上向きの鎖からなる結晶をup-up結晶,上向きと下向きがa-b面上で交互に並んでいるものをup-down結晶と呼ぶことにする。PMP結晶の密度は,主鎖の配向によらず一定であったが,自由体積の結合性には違いが現れた。この違いが気体透過性におよぼす影響をしらべるために,気体分子(O_2,N_2,CO_2,CH_4)を挿入し長時間のMDシミュレーションを行った。また,粒子挿入法を用いて,気体の溶解度を計算した。up-down構造ではup-up構造よりも活性化エネルギーが小さく,低温における拡散性が高くなった。up-up構造ではup-down構造よりも側鎖のゆらぎが小さく,気体の透過性は低くなるが,分離係数が高くなることが明らかとなった。結晶構造の微妙な違いによりキャビティーの構造が変化し,それに伴って,気体の拡散性と溶解性が大きく変化することが見出された。
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