Research Abstract |
本研究の目的は,ナノ気孔を有するセル構造体の静的接触特性及び摩擦・摩耗に及ぼす気孔率・気孔径の影響を明らかにすることにより,ナノ気孔を有するセル構造体の動的接触気孔を解明することである. 平成16年度では,緻密鋳鉄(FC250),成長黒鉛鋳鉄(気孔率:6.72%),成長黒鉛鋳鉄の切削粉を原料として焼結によって作製された気孔率がほぼ等しく(気孔率はそれぞれ19,1%,17.7%),気孔径分布の異なる2種類の多孔質鋳鉄,の計4種類を用いて,含油(緻密鋳鉄については,潤滑油を塗布)条件下における摩擦・摩耗特性に及ぼす気孔率,気孔径の影響を明らかにした.なお,摩擦試験及び摩耗試験は,ボールオンディスク型摩擦・摩耗試験装置により,すべり速度0.001m/s〜4m/s,ヘルツ最大接触圧力100MPa〜700MPaの広範囲な条件下で行った.相手材には高炭素クロム軸受鋼SUJ2を用いた. 本研究でこれまでに得られた主な結果は,以下のとおりである. 1.緻密鋳鉄(FC250)は,400MPa以上の高接触圧力条件下では,すべり速度によらず油膜破断により焼き付きを生じるのに対して,気孔を有する成長黒鉛鋳鉄(気孔:6.72%),多孔質鋳鉄材料(気孔率:19.1%,17.7%)はともに400MPa以上の高接触圧力条件下においても0.2以下の低摩擦を示すことが判った.このことから,多孔質化することによる含油の効果が確認された. 2.成長黒鉛鋳鉄(気孔:6.72%)は,低すべり速度・高接触圧力条件下及び高すべり速度条件下において油膜破断により,0.2以上の高い摩擦係数及び1×10^<-8>mm^2/N以上の高い比摩耗量を示すのに対して,多孔質鋳鉄材料(気孔率:19.1%,17,7%)は今回の試験条件の範囲では,明確な油膜破断を興さず,すべての条件において0.2以下の低い摩擦係数及び1×10^<-8>mm^2/N以下の低い比摩耗量を示すことが判った.このことから,気孔率の増加に伴う,含油条件下でのトライボロジー特性の向上が確認された. 3.気孔径分布の異なる2種類(気孔率:19.1%,17.7%)の多孔質鋳鉄において,気孔径が小さく,かつ気孔径にばらつきの少ない多孔質鋳鉄は,低接触圧力,低すべり速度条件において0.1以下の低い摩擦係数及び1×10^<10>mm^2/N以下の極めて低い比摩耗量を示すことが判った.このことから,気孔率だけでなく,気孔径の制御によりトライボロジー特性の向上を得られることが判った.
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