Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究で最も重要な要素である、高速で動作する圧電ブレーキの検討を中心に行った。本年度計画していたディスクブレーキを検討したが、実現可能な変位と発生力を得るためには積層圧電アクチュエータ(MPA)が多数必要で実現性の乏しい大型構造になることがわかった。そのため、小さな接触力でも自己倍力作用によって大きなブレーキトルクが望めるドラムブレーキの検討を、昨年度までの研究で明らかになっていた問題点の改善を中心に試みた。1つのMPAと変位拡大機構からなるブレーキアクチュエータ(BA)と回転ドラムを接触させブレーキトルクを発生する構成である。改善点を以下に示す。1.MPAが発生できる変位は微小であるため、本年度は弾性ヒンジと剛体梁を用いて2段階に変位を拡大する、従来の変位拡大機構より効果的な構造を考案した。2.また、BAに取り付けたブレーキシューを摩擦力の大きな材質に変更し、接触面の加工精度を向上させた。予圧による引っ張り力に耐えられるMPAを用いて直径10cm程度のネガティブ・ドラム型圧電ブレーキを有限要素法解析により設計・試作した。実験の結果、変位拡大機構は計算どおりに動作し、高速応答性に優れていた。残留振動が大きかったが駆動波形により低減できた。しかし、ブレーキトルクは僅かにしか変化しなかった。変位拡大機構で拡大された変位が摩擦面で吸収されたことが原因であった。また、組立精度も精密に要求されるため、直径が10cm程度の圧電ブレーキの実現は容易でないと思われる。しかし、小型なブレーキであれば実現の可能性が高いと考えられ、マイクロ・電磁・圧電ハイブリット・アクチュエーション・システムの発想に至った。また、ACサーボモータと超音波モータのダイナミックスを考慮して、購入したDSPにより制御システムの構築を試みたが圧電ブレーキ/クラッチが実現していないため、有効性は確認できていない。