Research Abstract |
フォトニック結晶ファイバのもつ特異な波長分散特性に着目し,フォトニック結晶ファイバの波長分散特性の高精度な制御技術,および所望の波長分散特性を得るための設計指針を開発することにより,次世代の高速光伝送システムに不可欠な波長分散制御技術を提供することを目的として研究を進め,下記の成果を得た. 1.フォトニック結晶ファイバの高精度解析のために,空孔の大きさ,形,配置によらず自在に対応可能なベクトル型の有限要素法を導入し,実効屈折率,波長分散特性,モード複屈折率,モードフィールド径,実効コア断面積などの光学特性を高速,かつ高精度に評価可能な,フォトニック結晶ファイバ解析設計支援環境を構築した.また,この解析設計環境を用い,波長分散特性の系統的な評価を行い,分散制御のための基本となるデータを収集し,データーベース化した.さらに,この基本データを基に,フォトニック結晶ファイバの簡易設計を可能とするための経験的関係式の導出に成功した. 2.屈折率導波型のフォトニック結晶ファイバに関しては,分散値だけでなく,分散スロープまでも含めて,広い波長帯域で波長分散特性を高精度に制御するためのフォトニック結晶ファイバ構造の設計指針を確立した.具体的には,通常のフォトニック結晶ファイバは,クラッド領域の空孔直径が全て同じ大きさの空孔によって構成されるため,その等価的な屈折率分布は単純なものとなり,分散特性を広帯域に渡って制御することが難しいことを示すとともに,各空孔リング層の空孔直径を変化させることにより,等価的にさまざまな屈折率分布を実現することができ,分散スロープを含めた広帯域な波長分散制御が可能であることを見出した.また,この設計法を用いて,波長1200nm〜1700nmの範囲で波長分散が零分散付近でフラットとなる超広帯域分散フラットフォトニック結晶ファイバや,従来の分散補償ファイバの分散値よりも数倍大きな負の分散値をもつ,広帯域な分散補償フォトニック結晶ファイバの設計に成功した. 3.フォトニックバンドギャップファイバに関しては,空孔の大きさや空孔リングの数と波長分散特性との間の関係を明らかにするとともに,空孔の形状を忠実にモデリングすることが,波長分散特性の実験結果を説明することに不可欠であることを初めて実証し,フォトニックバンドギャップファイバの極限性能を明らかにした.また,伝送帯域内に発生する特異な分散特性の要因が,空気コアを取り囲む最内側のシリカの薄い層に局在する表面波モードと,中空コア内に局在するコアモードとの結合によるものであることを突き止めた.
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