Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
平成16年度は、膜蛋白質である重金属イオンポンプ全長の調製とATP結合領域の結晶化スクリーニングの2点について研究が進行した。昨年度までに、銅イオンポンプ3種類について大腸菌発現系を構築したが、得られる蛋白質の純度や収量が低いなど、結晶化に向けて解決すべき点が多く残っていた。大腸菌BL21の変異株であるC41とC43株は、大量に膜蛋白質を発現しX線結晶構造解析に適した発現ホストとして報告されている。そこで、銅イオンポンプについてどうなるのか試したところ、E.hirae由来のCopBはBL21に比べC41株で発現した場合は、膜画分に2倍以上の活性体を回収できた。また、発現ベクター導入菌をおこす培養(前培養)とその希釈による大量培養の間に、菌体の成長をコントロールしたミドルスケールの培養を行うことが発現効率の向上に重要であることもわかった。結果として、1Lの培養液から2〜3mgの全長のCopB蛋白質を調製する事が可能となった。結晶化に向いていると期待される高度好熱菌由来の銅イオンポンプについては、希なコドンに対応した大腸菌ホストや発現ベクターなどをいくつか試したが、未だ大量発現系の構築には至っていない。しかし、膜貫通部分を含まないATP結合部位を含む領域は高発現し、75℃の熱処理とNiキレート精製によって1L培養当たり7.5mgの純度92%の蛋白質標品を得た。結晶化スクリーニングの結果、硫酸アンモニウムを沈澱剤とする条件で結晶化の手掛かりを得た。