Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究ではRhoファミリーやそのエフェクター分子(Rho-kinaseやMBSなど)による微小管やアクチン線維の再編成、細胞の極性形成機構や遊走機構を明らかにすることを目的とした。細胞の極性化の過程において小胞輸送が重要な役割を果たすことが知られている。これまでに、Rhoのエフェクター分子であるRho-kinaseがミオシンフォスファターゼや微小管結合蛋白質(Tau,MAP2など)を介してアクチン細胞骨格や微小管の再構築を制御していることを示してきたが、小胞輸送におけるRho-kinaseの役割は明らかではなかった。EGF受容体はリガンドと結合後エンドサイトーシスにより細胞内に移行し分解されるが、ドミナントアクティブ型RhoによりEGF受容体の取り込みが抑制されることが既に報告されている。今回、ドミナントアクティブ型Rhoと共にドミナントネガティブ型Rho-kinaseを発現させたところ、ドミナントアクティブ型RhoによるEGF受容体の取り込み抑制が部分的に回復した。このことより、Rhoの下流でRho-kinaseがエンドサイトーシスの制御に関わっていることが示された。そこで、小胞輸送に関わるRho-kinaseの新規基質分子の探索を行い、endophilinを同定した。endophilinは脂質二重膜を屈曲させることによりクラスリン被覆小胞の形成に関わる分子で、細胞表面からのエンドサイトーシスにおいて役割を果たす。Rho-kinaseはendophilin A1の14番目のThrをリン酸化することを見出した。endophilin A1の14番目のThrをリン酸化を模したAspに置換した変異型endophilin A1を細胞に発現させたところ、EGF受容体の取り込みが抑制された。さらに、受容体のエンドサイトーシスの際にendophilinはCblとCIN85と複合体を形成して機能するとされているが、リン酸化endophilinはCIN85に対する結合能が低下していることを見出した。以上のことより、Rho-kinaseはendophilinをリン酸化することで、おそらくCbl/CIN85/endophilin複合体形成を阻害し、EGF受容体のエンドサイトーシスを抑制すると考えられる。
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