Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
近年、ヘムやヘムリガンド(酸素分子、一酸化炭素、一酸化窒素等)の濃度変化を感知して、これを細胞シグナルへと変換するヘムセンサーと呼ばれる新しいヘムタンパク質ファミリーが次々と見つかり、注目を浴びている。本研究では、未だ不明であるヘムセンサータンパク質のセンシング機構を解明するため、いくつかのヘムセンサータンパク質について結晶構造解析を行った。本研究ではまず、ストレス(ヘム濃度低下)に応答してmRNAから蛋白質への翻訳を阻害するheme-regulated eIF-2α kinase(HRI)に着目した。HRIは基質である翻訳制御因子(eIF-2α)をリン酸化することによって、mRNAから蛋白質への翻訳を阻害するキナーゼであり、そのN末端領域(約140残基)がヘム結合部位としてストレスセンサーとして働いていると考えられている。HRIの分子内シグナル伝達の初期段階での構造変化を解明するために、HRIのN未端ヘム結合ドメインのX線結晶構造解明を目指し、そのN末端ドメインの結晶化を試みた。様々な結晶化スクリーニングキットと結晶化用恒温装置を用いた4℃と25℃での条件検索により、ヘム結合状態において、微結晶を得ることができた。その後結晶化の最適条件をスクリーニングしているが、X線結晶構造に適した大きな結晶を調整するには至っていない。また、本研究では大腸菌のヘムセンサータンパク質であるヘム制御ホスホジエステラーゼ(EcDOS)のヘムセンサードメインの結晶化も並行して行い、その結晶化に成功した。そして、活性型の還元型、不活性型の酸化型の両方についてその構造解析に世界で初めて成功した。高分解能の結品構造解析から、ヘムの酸化還元状態の違いによってヘムリガインドの交換が起こり、これがのEcDOSヘムセンサードメインの三次元構造を変化させていることが明らかとなった。この構造変化がホスホジエステラーゼの活性制御に関わっていることが強く示唆された。
All 2004
All Journal Article (3 results)
Journal of Biological Chemistry 279
Pages: 20186-20193
Chemistry Letter 33
Pages: 870-871
European Journal of Biochemistry 271
Pages: 3937-3942