Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
中等度好熱菌Bacillus sp.YM55-1由来アスパルターゼの精密分子構造と類縁酵素の分子構造とを局所構造比較の手法により比較し、検出した構造差異領域についての検討を行った。大腸菌由来アスパルターゼにおけるアスパラギン酸とマグネシウムイオンによる酵素反応へのアロステリック効果発現に関与している可能性が示唆された2箇所の領域については、具体的な構造変化機構の詳細は不明ではあるが、構造変化の活性部位への伝搬や、活性部位クレフトの空間体積の増減などが関与していると推定される。さらに、Bacillus sp.YM55-1由来アスパルターゼの基質分子結合モデルと類縁酵素の基質フリー構造および基質類似物結合複合体構造との詳細な構造比較を行うことにより、酵素反応遂行のために重要な役割を担っていると示唆されるフレキシブルなループ中のセリン残基が、活性部位中での基質分子との相互作用に重要な働きを担っている可能性が強く示唆された。また、基質結合状態の疑似構造を形成していると期待される基質類似物複合体結晶を得ることを目的として、基質類似物十数種類との共存下での結晶化の条件検索の検討を行った。局所構造比較手法の妥当性の検討のため、他の幾つかのマルチサブユニット形態のタンパク質について、状態の異なる同一分子の結晶構造での構造差異に対して同様の手法による局所構造比較を行ったところ、局所的な構造変化部位を明確に検出することが可能であるという予備的な結果を得ることができた。