Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
1)ファルネシルトランスフェレース阻害剤(R11577)の第I相試験投与前後の末梢リンパ球より得られた検体を用いてcDNAマクロアレイを施行した。同時に行われた血中の薬物動態等の結果より、濃度依存的、あるいは暴露時間依存的に発現の上昇する遺伝子群を検索した。結果、RASと同様に、ファルネシルトランスフェレースの修飾を受けるRhoが直接的なエフェクターであることが解明された。統計学的手法により、理論上の経路が明らかとなった。また、生体内で、ファルネシルトランスフェレースを加えた前後でのRhoの活性が明らかに減少していることを解明した。さらに、Rhoの活性低下がアポトーシスを誘導し、抗腫瘍効果を導くモデルを細胞株レベルで確立した。(論文投稿中)2)ゲフィチニブの第II相試験投与前後の気管支肺生検(TBLB)検体、あるいは正常皮膚組織より得られた検体を用いて、cDNAマクロアレイを施行した。レーザー・マイクロダイセクション法や、T7-based RNA増幅法を用いた遺伝子増幅法を加えることで、微量検体からの遺伝子発現アレイが可能であることを示した。非小細胞肺患者30例が登録し、27例でゲフィチニブ投与前後での正常皮膚生検が可能であった。内22例で、約800個がん関連遺伝子のcDNA発現解析が可能であった。20個の遺伝子において、投与前後の発現量比によって完全に非発症と発症を分離できる(CS : Complete separation)であった。内12遺伝子において、ILDを発症された患者で投与後有意に発現量の増加をみとめ、非発症群では変化なし、または減少というように異なったプロファイルを示した。この中には、MAPK4やc-src,c-cblなどEGFRの下流に存在し、理論上、ILDの予測タンパクの候補になりうるタンパク質が存在した。この中で、c-src遺伝子に注目し共同研究の結果、c-srcの変異とゲフィチニブの標的であるEGF受容体の2量体の形成の間には相関があることを示唆する結果を得た。また、プロファイル中のspAの肺での発現量の維持が、ゲフィチニブによる肺臓炎の予測マーカーになることを示した。(論文投稿中)