Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
前年度に引き続きES細胞を用いて心筋細胞を分化誘導する方法を試みたが、やはり心筋細胞への分化効率が低い事、ソーティングの際の細胞へのダメージが大きい事から満足の行く結果は得られなかった。従って、フィブリン塗布培養皿で直接ES細胞を培養しながら心筋細胞への分化効率を改善する方法、あるいは分化誘導後に心筋細胞のみを回収する方法はいずれも困難であると考えられた。また心筋シートを作成する手法として、フィブリンをコーティングした培養皿を用いる手法が温度感応性培養皿を用いる手法の代替となりうるかを引き続き検討した。心筋初代培養細胞を用いた実験を繰り返し、心筋細胞シート間で安定した電気的結合が形成される事、重層心筋細胞シートがマウスおよびラットの生体内で生着し続ける事を確認した。また、ES細胞に変わる細胞供給源として骨格筋細胞に着目した。新生仔ラットの下肢骨格筋を用いて骨格筋芽細胞の初代培養を行い、フィブリンコーティング培養皿を用いて骨格筋細胞シートを作成する事に成功した。心筋細胞シートと同様に、骨格筋芽細胞のシートの電気的な性質を調べるため、電位応答性蛍光色素を用いたオプティカルマッピングシステムを用いて解析した。その結果、骨格筋細胞シートは心筋細胞シートとは全く別の機序で自律収縮を行う性質を持ち、また心筋細胞シートと骨格筋細胞シートは安定した電気的結合を形成する事は困難であろうとの結論に達した。過去には骨格筋芽細胞から増殖、誘導された骨格筋細胞が心筋細胞と電気的結合を形成し、また心臓へ移植した際に心機能を改善する可能性があるという報告が数多く出されていた。しかし我々の実験結果から、大量の骨格筋細胞を心臓に移植する事は電気生理学的な見地からはまだいくつかの間題があると考えられた。