Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
今年度は、前年までの乳児白血病におけるp15、p16のメチル化異常についてのBisulfite法を用いた検討を、さらに例数を増やして行った。対象は、乳児白血病から樹立された細胞株13株、および乳児白血病症例12例である。いずれも、乳児白血病に特徴的であるMLL遺伝子の再構成を認める細胞である。細胞株13株のうち、p15遺伝子のメチル化は8例(62%)、欠失は3例(23%)、またp16遺伝子のメチル化は8例(62%)、欠失は2例(15%)に認められ、いずれの遺伝子にも高頻度に異常が認められた。それに対し、患者検体12例中ではp15遺伝子のメチル化は4例(33%)に認められたが、p16遺伝子のメチル化は認められず、細胞株に比較して異常の頻度が低かった。これらの頻度については、白血病の型や遺伝子異常のタイプによる明らかな差はなかった。この結果から、以下のような結論が得られた。・MLL遺伝子異常をもつ乳児白血病では、約3分の1の症例でp15遺伝子のメチル化が認められ、白血病の進展への関与が示唆された。・p16遺伝子のメチル化は患者検体では認められず、p16遺伝子のメチル化の乳児白血病への関与は限定的なものであると思われた。過去の報告との相違については、メチル化検出の方法の差異によるものである可能性がある。・細胞株で高頻度に認められたp15、p16遺伝子のメチル化および欠失は、細胞の株化に伴う2次的な変化が含まれている可能性がある。さらに、乳児白血病は胎児期の発症の可能性が示唆されているため、p15、p16遺伝子が胎児期にメチル化されている可能性について、臍帯血を用いて検討を行った。8例の正常児臍帯血において、p15、p16いずれの遺伝子のメチル化も認められず、これらの遺伝子のメチル化は胎児期には生じていないと考えられた。なお、これらの結果の一部は平成17年度の臨床検査医学会総会にて発表した。