Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
ラット視神経挫滅によりSecondary degeneration(二次的変性)を誘導し、逆行性に生じた網膜神経節細胞あるいは網膜全体の障害評価を、生存網膜神経節細胞数のカウント並びに組織切片にて施行した。視神経挫滅により誘導される網膜神経節細胞死は、ラット両側上丘より蛍光色素を注入し、逆行性に生存している網膜神経節細胞を標識することにより、モデル作製後4週後に評価した。対照眼と比較し約34%に網膜神経節細胞死が認められた。また、H.E染色による組織切片を用いて、視神経挫滅後の網膜各層(内網状層、内顆粒層および外顆粒層)の構造的変化が認められるか否かについても検討した。いずれの層においても対照眼と比較し、統計学的有意な変化は認められなかった。眼科領域において様々な神経変性疾患(緑内障や網膜色素変性症など)が存在し、そのいずれもが確固たる治療方法が確立されていない。今回用いた視神経挫滅モデルは、Secondary degeneration(二次的変性)を今後分子生物学的あるいは種々の薬効評価をするのに有効なモデルであると考えられた。そこで我々は、この視神経挫滅モデルを用いて塩酸ロメリジンの神経保護効果を検討した。方法は、塩酸ロメリジン10 or 30mg/kgの量を1日2回の割合で経口摂取にて4週間投与し、同様の手段にて網膜神経節細胞および網膜内層の変化について検討した。網膜神経節細胞死は、塩酸ロメリジン10mg/kg or 30mg/kgの両群ともに約10%程度に抑えられた。両群間に有意差はなかったものの、両群ともコントロール群に対し有意に網膜神経節細胞が保護された。塩酸ロメリジンは、二次的変性を来たす視神経疾患の障害を軽減することから、将来の新しい視神経変性疾患の治療薬としてその可能性が示唆された。