Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は、サイトカインの一つであるbasic Fibroblast Growth Factor (b-FGF)を歯根膜に作用させることにより線維芽細胞の活性を向上させ、さらに再植歯に咬合機能を付与することにより歯根の置換性吸収や骨性癒着を防止することを目的として企画された。まず、再植歯歯根膜に対するb-FGFの作用を調べるために、当講座で従来より行ってきたラット再植歯の実験モデルを用い、b-FGFを再植歯に応用した際の歯根膜の動態について病理組織学的に検討した。実験群では再植前にb-FGFの濃度を0.0625μg/mlまたは0.625μg/mlに調整したBeltzer UW Solutionに浸漬した。対照群ではb-FGF無添加のBeltzer UW Solutionを用いた。観察期間は術後2週間とし、観察期間終了後に通法に従いパラフィン切片を作製しH-E染色を施した。結果として、対照群では、歯根膜の連続性は回復しており、出血等の所見はみられなかった。歯根膜腔は狭少化し、歯根膜中に島状の骨の発現が認められた。実験群では、b-FGF 0.0625μg/ml添加群、0.625μg/ml添加群ともに、歯根膜の連続性は回復しており、出血等の異常所見はみられなかった。b-FGF 0.0625μg/ml添加群においては歯根膜腔の狭少化は認められたものの、歯根膜中における島状の骨の発現はほぼ認められなかった。0.625μg/ml添加群では歯根膜腔の狭少化および歯根膜中における島状の骨の発現が認められた。以上のことから、ラット再植歯にb-FGFを応用したところ、歯根膜中における骨の発現を抑制する可能性と同時に至適濃度の存在が示唆された。歯根膜中における骨の発現が抑制されたことから、将来的に再植歯歯根膜の治癒過程で生じるアンキローシスをb-FGFの応用により抑制しうる可能性もあると考えられた。本結果については、第119回日本歯科保存学会秋季大会にて発表・報告した。