Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は、日常生活において顎関節症患者が自覚するストレスの強さと症状の発現の時系列的関係を解明することが目的である。東北大学病院に来院している顎関節症患者のなかから、データ記録の同意が得られた方を対象に、本研究用のデータ入力プログラムを搭載した情報端末装置(Clie,ソニー社製)を携帯させ、起床から就寝までの間、自覚するストレスの強さと臨床症状(顎関節もしくは咀嚼筋の自発痛、運動痛、開口障害、関節雑音)の強さをVisual Analog Scale(VAS)にて2時間毎に入力してもらい、ストレスの強さ(VAS)が増加もしくは減少した時点の前後4時間について、各臨床症状の増悪、不変、緩解の頻度を算出した。その結果、ストレスの強さが減少した時点において自発痛が増悪していた頻度は、その2時間前と4時間前の記録時と比較して有意に少ないことが明らかになった。また、自発痛が緩解していた頻度については、その2時問前、4時間前、2時間後、4時間後の記録時と比較して有意に多かった。一方、ストレスの強さが増加した時点において自発痛が緩解していた頻度は、その2時間前と2時間後、4時間後の記録時と比較して有意に少ないことが認められた。同様に、運動痛、開口障害、関節雑音についても、ストレスの強さが減少した時点における症状の緩解頻度が、その前後の記録時と比較して有意に多い結果が得られた。以上のことから、顎関節症患者では、ストレスの減少と症状の緩解が時期を同じくして生じる傾向にあることが判明した。また、ストレスの増加は症状の増悪に対して即時的な影響を及ぼしていないことが示唆された。