Research Abstract |
顎機能と聴覚系機能との関連に関する研究の一環として,下顎側方移動における耳管機能への影響について検討した. 1.目的 耳管は咽頭と中耳腔を結ぶ小管で,耳管の開大運動は咀嚼筋と同様に三叉神経第三枝支配である口蓋帆張筋が主に関与している.また,下顎位の中耳伝音系機能を指標とした評価,咬合高径の変化と耳管機能との関連が報告されているが,下顎側方移動においての耳管機能への影響は明らかではない. 今回,音響耳管機能検査法を用いて下顎側方移動における耳管機能への影響を検討し若干の知見を得たので報告する. 2.方法 被検者は個性正常咬合有歯顎者7名(14耳)で耳管機能の測定には音響耳管検査装置ET-500(永島医科器械)を用い,通法に従い座位にて耳管開閉持続時間(DUR),耳管開大による外耳道の音圧変化量(AMP)を測定した.測定下顎位は,閉口位(CP)と下顎側方位を対象とし,下顎側方位は作業側(WS),非作業側(NWS)ともに犬歯尖端位とした.耳管機能の比較では,左右各被検耳のCPに対するWSとNWSの変動の有無を検討した, 3.結果と考察 CPと比較してWSではDUR,AMPともに有意差は認められなかったのに対して,NWSではDUR,AMPともに有意差が認められた. 以上の結果から,NWSにおいて耳管機能の変化が示され,下顎の側方移動に伴う内側翼突筋の緊張が口蓋帆張筋の活動を抑制したものと推察され,その結果,耳管機能に影響を及ぼす可能性が示唆された. 4.文献 1)篠田 誠:Dynamic Complianceによる下顎位と嚥下機能との関連,日大口腔科学,27,1-9,2001
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