Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
近年、ヒトリンパ内皮細胞に特異的な抗体が報告され、臨床材料を用いたリンパ管新生の研究が可能となってきた。今回われわれは、D2-40抗体をもちいてヒト舌癌患者におけるリンパ管新生について検討した。対象は1996年4月から2004年3月までに愛知学院大学歯学部附属病院口腔外科第一診療部、関連病院および愛知県がんセンター頭頚部外科にて切除を行った舌癌患者、男性20名、女性10名の合計30名で、年齢は29歳から86歳で平均62.5歳であった。病期分類の内訳はstageIが5名で16.7%、stageIIが13名で43.3%、stageIIIが8名で26.7%、stageIVが3名で13.3%であった。免疫染色は前処理として、マイクロウエーブ処理を行い、一次抗体として200倍希釈したマウスモノクロナール抗体(D2-40、signet社)を用いて、ABC法にて発色を行った。結果:D2-40陽性の脈管はリンパ管に特異的で明らかな血管は発色されなかった。正常の舌粘膜下組織に比べ、腫瘍近傍の上皮過形成部の粘膜下ではリンパ管の増生が認められ、腫瘍辺縁部でも増生傾向が認められたが、腫瘍間質では、血管と異なり明らかなリンパ管増生は認められなかった。またリンパ管以外に扁平上皮癌細胞の約50%にD2-40抗体により腫瘍の細胞膜が陽性に染色された。分化型では基底細胞側に限局していたが、低分化型では、小脈巣がびまん性に陽性であった。考察:D2-40抗体は血管とリンパ管を判別することができ、リンパ管新生の解析に有用と考えられた。腫瘍細胞のD2-40抗体陽性の意義に関して細胞の増殖、分化との関連が示唆されるが、今後はさらなる検討が必要である。