Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
歯周病は慢性炎症の病態を呈し、炎症の増悪に血管新生が深く関わっている。そこで血管新生に深く関与する血管内皮細胞増殖因子VEGFに注目し、歯肉溝滲出液中のVEGF濃度を測定し、これらが歯周炎の病態と相関を示すことを明らかにした。また、歯周治療前後における歯肉溝滲出液中のVEGF濃度の変化についても研究を行い、VEGFの動態について明らかにした。VEGF(VEGF-A)は治癒においても重要な役割を果たすと考えられているが、炎症過程でも産生するため、生態内でその役割について解明することが難しい。このことから、成熟した血管新生において細胞間のシグナリングに関与し、VEGFのreceptorであるVEGFR-2を活性化する、VEGF-CとそのreceptorであるVEGFR-3に注目した。抜歯時に採取した炎症歯肉の組織切片ではVEGF-Aは炎症性細胞と思われる細胞浸潤とともにその周囲にVEGF-Aが免疫染色法で認められた。また、VEGF-Cについてはネガティブコントロールとの差が確認できなかった。これらのことより、VEGF-Cはリンパ管形成に作用する成長因子として注目されてきたが、VEGF-Aと同様、血管新生にも関わっていることは最近明らかになってきているが、歯周組織では今回VEGF-C、VEGFR-3の存在は確認できなかった。しかし、組織の採取時期や採取部位、採取方法、前処理の方法などの再検討により、今後確認できる可能性もあると考えられる。