Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では、保健師が一つの事業を立ち上げるプロセスにおける地域看護診断に着目してきたが、本年度においては、地域看護診断を利用したその目的とその方法に着目して研究を実施した。研究対象を10年以上勤務し、熟練された活動をしていると他者や上司から推薦を受けた熟練保健師5名とし、地域看護診断を利用した目的、その方法、プロセスについて半構成的面接法により調査した。その結果、地域看護診断の手法は、総合アセスメント型、パートナーシップ型、日常活動からの問題発見型に分類することができた。総合アセスメント型は、一事業ではなく一分野の保健計画作成の目的として実施されていた。その背景として、自治体の予算、人的資源等の効率化等により事業の改革を迫られて全体の傾向、健診結果などを検討する必要性があり、一つの事業を運営する管理者としての立場として実施されていた。パートナーシップ型は健康づくり型の保健活動の手法を取り入れられており、健康日本21プラン作成を目的として実施されていた。この手法を取り入れるために指導者からの助言を得ながら進められ、ワークショップの運営技術に苦心しながらも、住民や職員の参加により、住民の生の声が活かされた計画立案がなされ、新たな住民組織が生まれていた。日常活動からの問題発見型においては、日頃の保健師活動からの気づきから、さらにその情報について収集し、事業化するため他の職員等の意見を取り入れながら企画案を作成し、事業化しているプロセスが見られた。この手法では特別な予算や人的資源がない場合でも、共通の健康課題をもつ地域住民に必要な事業の立ち上げとなっており、その方法や対象の選定に反映されていた。またどの手法においても、地域住民の健康課題と地域特性を関連づけて捉え、全てが健康課題を解決する資源でもあるという視点から住民や関係者を巻き込みながら活動を実現化していく保健師の技が見られた。