本研究の目的は、公立中学校で実践可能な「生徒一人ひとりが既存知識と科学概念のどちらからでも妥当な解釈ができる」授業の提案をすることである。そのために以下の検討をした。 1つ目は、小学校で実践された「説明活動」を中学校で実践できるように検討したことである。中学校め授業では単位時間当たりの学習内容の多さや概念の抽象度の高さにより、小学校で提案されるような説明活動のそのままの実践が難しかった。一方で中学校の授業に合わせてデザインした説明活動が、生徒の科学概念の理解を深めるのに有効かは分からない。そこで中学校の授業に合わせてデザインした説明活動が、科学概念の理解にどう影響するのか検討した。その結果、本研究において提案した説明活動に取り組むことで、科学概念の理解が促されると分かった。つまり中学校の授業に合わせてデザインした説明活動には一定の効果があると言える。具体的に提案したことは、身の周りで起こる現象について科学概念を使って説明する課題に対して、グループで説明し合わせた後に、未学習者にも分かるようにミニレポートを記述させることである。 2つ目に、説明活動が学習過程および学習内容の理解にどのような影響を及ぼすかを明らかにするために、学習者の対話や行為について検討した。説明活動をした生徒の中には、それにより科学概念の理解を深められる生徒とそうではない生徒がいた。その違いは対話や行為により起こると考え、どう違うかを分析した。その結果、科学概念の理解の深化を促す対話とそうではない対話の傾向が分かった。深化を促さない対話は、科学概念を無視した解釈をするものが示唆された。 2つの検討から中学校の理科での科学概念の理解を促す授業方法を明らかにできた。しかし説明活動の方法を明らかにしたが、それに至るまでの授業展開は未検討である。今後、授業展開と説明活動を含めた授業の検討を進めることが課題である。
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