Outline of Annual Research Achievements |
単結晶試料の結晶方位を決定する方法としてX線ラウエ法がある. 元々X線ラウエ法では回折X線をフィルムに記録していたが, より迅速な方法としてポラロイドフィルムを用いることにより露光時間の短縮化, および暗室作業からの解放が実現された. しかしながら近年写真技術がデジタルカメラ化するに伴いポラロイドフィルムの生産が中止され, 買い置き品も枯渇しつつあることから、新たな測定方法の導入が必須となってきた. 本研究はX線ラウエ法で従来用いられてきたボラロイドフィルムカセットに置き換え可能な装置を, レンズ系と長時間露光が可能な高感度CCDカメラを用いて試作開発することを目的としたものである. 試作装置はアルミ板材を用いて筒状の暗箱を構築し, 蛍光板上にできる回折斑点の像を鏡により反射してCCDカメラで観察する構造とした. 実験は試料に特別な準備が必要ない背面反射ラウエ法を用い, 試作装置をX線管と試料との間に配置してCCDカメラにより回折斑点が撮像可能か検証を行った. 実験の結果、装置を通したX線で蛍光板上に回折斑点ができ、CCDカメラによってその反射像を以下のように記録できることを確認した. ・試料にシリコンウエハーを用いた場合, 30kVの電圧30mAの電流のタングステン管で3~5分程度の露光時間で結晶方位を同定するのに十分鮮明な回折斑点を撮像できた. ・鏡とレンズ系を用いることによりX線の光路を確保しつつ, 得られる回折斑点を試料, 蛍光板, カメラの位置関係から試料の影が写りこむことなく, また結晶方位の決定に問題となるような歪みを生じることなく撮像が可能であった. ・CCDカメラを使用することで, 現在X線感光材の代替品となっているイメージングプレートと同様に繰り返し撮像可能かつ廉価な装置を実現した. 以上より本研究で試作開発した装置はX線ラウエ法におけるボラロイドフィルムカセットと置き換え可能な装置として非常に有用なものであることが確認された.
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