本研究を実施するにあたり、熱画像カメラで、動物個体の温度を計測すると、実際の体温ではなく表面体温のデータが取得される。実際に動物個体の体温を連続測定する場合、動物に手術をしてデータロガーを体内に埋め込み計測しなければならない。しかしながら、本研究では、動物個体を傷つけない非侵襲的な計測方法を目指している。したがって、本研究では、小型実験動物の体温を表面体温として研究した。なお、表面体温のデータは、生命科学分野で、必要とされているデータの1つである。 小型実験動物の熱画像カメラのデータを取得するため、熱画像カメラで連続撮影を実施した。しかしながら熱画像カメラのデータは、画像データと各ピクセルの温度数値データを同時に記録するため1枚の撮影に対して記録時間が掛かり、行動測定するための連続測定には不向きであった。そこで、本研究では、熱画像カメラで撮影した画像データの画像輝度が温度情報を含んでいることに着目し、熱画像の画像データのみで、温度測定と行動測定することを提案した。 はじめに、画像輝度と実温度の校正をおこなった。しかし、熱画像カメラの機能上、熱画像カメラは、自動校正されるため、熱画像の画像輝度が大きく変化する。そこで、自動校正の回数を10秒に1回の設定に変更することで画像輝度の変化量を抑制したところ、画像輝度が10%以下の変化量となり、画像輝度値が安定した。この設定にて、再度、画像輝度と実温度を校正し、近似線を作成した。この近似線を指標として、温度計測をおこなうことで、画像輝度から温度データを取得することが可能となった。なお、本研究で行った画像輝度から算出した温度の値と温度計による実測値の誤差は、20℃から40℃の範囲にて、最大1.6℃の誤差であった。 行動測定は、熱画像データを閾値処理と二値化処理による画像処理をおこなうことで、小型実験動物を限定した。限定した小型実験動物の重心を算出し、位置情報のデータ取得することで行動測定をおこなった。 以上、2種類の測定方法を同時に実施することにより、熱画像データを用いた表面体温計測と行動測定の連続的な同時計測が可能となった。
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