吾妻郡は範囲が広い上に環境が多様であり、未開発の地域が多いことから、自生する絶滅危惧植物は県内の他の場所よりも多く見られる。その例として、全国3大規模のサクラソウ群落や小貝川以上のヒメアマナ群落がある。しかし、郡全域を調査範囲としている者は私だけで、ピンポイントで調査している者が1名いるのみである。そのため、この調査により新たな絶滅危惧種の産地が発見される可能性が大きいほか、八ッ場ダムなどの開発や盗掘などによって消滅・減少する絶滅危惧種の実態を把握しなければならない。 調査方法としては、従来の環境省や群馬県の調査により位置が分かっている絶滅危惧植物の群落の変化を確認するほか、郡内を徒歩で調査して新産地を探した。そして新産地を見つけた場合は、GPSによる座標確認、その群落の規模、個体数、生育環境の記録などを行い、調査目的から標本採集は行わず、写真を証拠記録とした。そして、その結果は群馬県自然史博物館に報告した。 調査の成果として、主な内容から1種ずつを挙げる。 ○新産地を新たに見つけたもの ・トキホコリ(国II類、県II類)を吾妻川に沿った複数の神社の境内で確認。特異な分布と言える。 ○分布地域が、今までの記録よりも広いことを確認したもの ・サクラバハンノキ(国準、県I類)の県内唯一の群落が、実際にはほぼ2倍の面積を持つ。 ○産地がなくなることが確定したもの ・カザグルマ(国準、県I類)の日本北端の群落が、八ッ場ダムの3年後予定の試験貯水で水没が確実。 ○野外絶滅を確認したもの ・ナツエビネ(国II類、県I類)の県内唯一の自生地が、森林の伐採により消滅。 なお、徒歩での調査によるので、1年では十分な調査がでなかった。また、GPS衛星「みちびき」による精度の向上により、位置の再確認をする必要がある既知の群落も出てきた。
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