【背景・目的】 我が国において、心疾患と脳血管疾患は、悪性新生物と共に日本人の三大死因とされてきた。これらの疾患の背景には、生活習慣病の一つである動脈硬化症が存在する。我々は、マクロファージの脂質球内に多量のコレステリルエステルを蓄積させる、新規変性リポタンパクであるアクロレイン化LDLを見出した。しかし、実際の血中濃度についてはその測定法が確立されていないことから明らかになっておらず、またどのような集団的背景においてアクロレイン化LDLが変動するかも明らかでない。また、以上のことから、将来的には臨床検査として運用可能な方法での、ヒト血漿中のアクロレイン化LDLの測定法の開発を試みることを目的とした。平成27年度は、生体内で存在しうる濃度のアクロレイン化LDLを作成、評価を行った。 【方法】 1. アクロレイン化LDLの調製 : LDLとアクロレインを37℃で24時間または7日間加温し調製した。 2. 細胞培養 : ヒト単球性白血病細胞株THP-1を150nM PMAを含む10% FBS/RPMIを用い37℃、5% CO2で2日間培養し実験に用いた。 【成果】 生体内を反映する低濃度のアクロレインとLDLを反応させることで形成されたアクロレイン化LDLは、アクロレイン付加体をもつapoB単分子を含むこと、マクロファージのコレステリルエステル蓄積を促進することが明らかとなった。 今回作成された生体内で存在しうるアクロレイン化LDLの検出が可能となるよう、測定系の高感度化を実現することで、ヒト血漿中のアクロレイン化LDLの定量が可能となると期待される。
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