Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】先進国における高齢者人口の増加は大きな問題である. 中でも, わが国の高齢化問題は深刻であり, 65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は2割を越え世界でも有数の超高齢化社会を迎えている. そこで, 日本整形外科学会では運動器障害による要介護状態や要介護リスクの高い状態を表す新しい言葉としてロコモティブシンドローム(ロコモ)を提唱している. 本研究の目的は, 超音波検査を用いて大腿四頭筋を画像解析し, 加齢、筋力および筋質との関係を明らかにすることである. 【研究方法】健常ボランティア145名290肢を対象とし, 45歳未満を若年群(136例, 平均年齢23.2±5.0歳), 45~64歳を中年群(62例, 55.7±6.3歳), 65歳以上を高齢群(92例, 平均年齢73.2±5.3歳)とし, 膝伸展筋力および超音波画像の評価値の比較検討を行った. なお, 本研究は岐阜大学医学研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した. 超音波検査は, 超音波診断装置GEヘルスケア社製LOGIQe, 6.0~14.0MHzのリニア型プローブを使用し, 大腿四頭筋厚(muscle thickness of the quadriceps femoris : QMT)と筋内部エコーを評価した. 筋内部エコーについては, コンピュータによるテクスチャー解析を行い, MEAN, skewness(SKEW), kurtosis(KURT), inverse different moment(IDM), sum of entropy(SUM)およびangular second moment(ASM)を指標に用いた. 膝伸展筋力は, 下肢筋力測定装置を用い, 利き手と同側の大腿四頭筋の等尺性最大膝関節伸展筋力を計測した, 検査肢位は端坐位, 股関節90度屈曲位, 膝関節90度屈曲位とし、筋力測定機器のパッドを下腿遠位部に装着し測定を行った. 【研究成果】QMT, SKEW, KURT, IDM, ASMおよび膝伸展筋力は若年群と中年群に比し高齢群において有意に低下した. 一方, MEANとSUEは中年群と高齢群と比較し若年群で有意に減少した. 重回帰分析の結果, 膝伸展筋力の実測値と超音波画像特徴より求めた推定値は有意に相関した. 本研究では, 大腿四頭筋について, 膝伸展筋力と筋厚および筋質とを比較検討し, 年代間に有意な差を認めた. 今回の検討によって得られた超音波画像の解析方法は高い精度で膝進展力の推定が可能であり, ロコモの予防に有用である可能性が示唆された. 今後更なる検討を行い, 筋年齢という新たな指標の確立に取り組みたいと考える.
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