Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
申請者は哺乳類以外の生物種(細菌、酵母、植物、昆虫、両生類)の遺伝子発現系を基に、複数の薬剤誘導性遺伝子スイッチを作製し、特定の機能に関連する神経細胞集団を時間軸に沿って遺伝学的に切り分ける技術開発を行っている。平成27年度には設計した人工遺伝子発現系の誘導剤の血液脳関門透過性評価、哺乳類培養細胞を用いたルシフェラーゼアッセイによる薬剤誘導性人工遺伝子スイッチの同定、そして実際にラット大脳において遺伝子発現On/Offの検証まで研究を進めた。設計した人工遺伝子発現系を哺乳類中枢神経系に適用するには、目的遺伝子を誘導する化合物(誘導剤)が血液脳関門を十分量通過することが必須である。そのためトランスポーター発現イヌ腎臓尿細管上皮細胞由来MDR1-MDCK細胞を用いた血液脳関門透過性試験によって、まずはドキシサイクリンを含む10種類の誘導剤からドキシサイクリンと同程度以上の透過性を示す6種類の候補へと絞り込んだ。次に絞り込まれた誘導剤による遺伝子発現系の下流にルシフェラーゼ遺伝子を繋げたプラスミドの構築と、ヒト胎児由来腎臓上皮細胞HEK293T細胞へのトランスフェクション、そして培地に誘導剤を添加した際のルシフェラーゼタンパク質の発現量の測定を行った。大腸菌・真正細菌・カイコガ由来の18種類の人工遺伝子スイッチをアッセイした結果、対応した誘導剤に対して高い遺伝子発現量をもち、かつドキシサイクリンに対して遺伝子発現量変化が十分低い遺伝子スイッチ5種類が選抜された。その5種類の遺伝子スイッチのうち1種類について赤色蛍光タンパク質(mCherry)を誘導剤により発現するレンチウイルスベクターを作製しラット海馬に注入した。誘導剤投与の有無で2群に分けて飼育したところ、非誘導個体では僅かなmCherryの生蛍光が誘導個体でははっきりと組織学的に確認され、1年目にしてまずは1つ有望な人工遺伝子スイッチの作製に成功した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。