Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
RNAウイルス疑似種集団内のバリアントを網羅的に解析するため、2005年から2013年にかけて仙台で分離されたヒトメタニューモウイルスの臨床分離株12株について、次世代シークエンサーを用いて解析した。各株培養上清を超遠心により濃縮し、ペレットからウイルスRNAを回収した。ライブラリはNEXT Ultra RNA prep kit(NEB)により調整し、解析にはMiSeqを用いた。その結果、全12株の遺伝型を同定し、そのうち11株の全長ゲノム配列を同定した。また、同定された塩基配列を基に系統解析を実施し、これまで報告のある日本分離株との系統関係を明らかにした。次にウイルス集団内のバリアント解析を実施し、10%以上集団内に含まれるアミノ酸バリアントを網羅的に検索した。その結果、複数のウイルス株でG遺伝子、SH遺伝子の順にバリアントの数が多い傾向を認めた。また、塩基レベルの解析では宿主デアミナーゼ酵素(APOBEC3G、ADARなど)の作用を示唆するデータが得られた。今回の研究成果により、ヒトメタニューモウイルス疑似種集団内に存在するバリアントの網羅的なリストが得られた。これはバリアント間の協調現象を機能的に解析していくための基礎データとして有用である。またヒトメタニューモウイルス疑似種集団はG遺伝子およびSH遺伝子領域に豊富にアミノ酸バリアントを含むことが明らかになった。特にG蛋白質はヒトメタニューモウイルスの抗原性にも関与するエンベロープ糖蛋白質であり、そのバリアントが集団内に存在することが抗原性の迅速な変化に寄与している可能性が示唆される。また、本来は抗ウイルス因子である宿主デアミナーゼがウイルスの進化に与える影響についても今後検討したい。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。