Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
三重項-三重項消滅に基づくフォトンアップコンバージョン(TTA-UC)は、ドナーとアクセプターを組み合わせて行う機構であり、低強度で高効率な波長変換が可能であることから様々な分野への応用が期待されている。実用化に適する固体中の TTA-UC システムではドナー・アクセプター分子が非常に密集して存在する関係上、溶液中とは異なる様々な励起子の失活過程が存在し、これが UC 量子収率を低下させる要因であった。特にアクセプター分子間の濃度消光と UC 発光のドナー分子への逆エネルギー移動は深刻な消光過程であるにも関わらず、それを改善する方法論はこれまでほとんど提案されていないのが現状であった。そこで本研究では、種々の失活過程を抑制し、TTA-UC によって得られた一重項励起子を効率よく回収するようなエネルギー捕集分子を導入した固体 UC システムを開発の開発を試みた。その結果、アクセプター分子の発光と吸収帯が大きく重なるコレクター分子を添加することにより、薄膜状態のアクセプター蛍光量子収率が二倍以上の向上を示し、その結果固体系で最大の 9.0% というUC量子収率を実現した。また、アクセプターの一重項励起子のダイナミクスを解析することにより、29.7 nsの長寿命を有する非局在化一重項励起子が、26.1 nmもの大きな一重項拡散長を与えることを見出した。さらに、ドナー分子とコレクター分子が、薄膜中で空間的に分離して固定されているために、一重項の逆エネルギー移動が完全に抑制されていることを明らかにした。以上のように本研究では、TTA-UC 実用化のために非常に有用でありながら解決法が不明瞭であった固体 TTA-UC システムに対し独自の着眼点でその解決に臨み、その結果適切なアプローチを提案することに成功した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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