Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
採用最終年度である本年は、開殻ナノ構造体の高次構造である非対称な電荷移動性に着目し、検討を行った。これは従来対称で電荷移動性の効果が小さい構造に対して検討が主に行われてきた開殻非線形光学物質の設計に非対称性をあらわに導入することに対応する。以下に詳細を示す。実在ヘテロ原子置換Chichibabin炭化水素骨格へと着目し、その電荷移動性、開殻性、三次非線形光学物性の解明を行なった。これらの系は実在の骨格であり、混合原子価化合物として注目を集めているが、その酸化状態を変化させた、Chichibabin炭化水素骨格と等電子構造を持つ状態の検討はほとんど行われていない。これらの解析を行なった結果、中間的な開殻性が発現する対称系の一重項状態及び閉殻で中間的な電荷移動性が発現する、中間的な非対称性を持つ系の一重項状態において著しく大きな三次NLO物性が発現することが判明した。これはヘテロ原子置換Chichibabin炭化水素が一重項状態において優れたNLO材料となることを明らかにするのみならず、電荷状態によってスイッチ可能なNLO材料の可能性を示す。次に、非対称ヘテロフェナレニル二量体の解離に伴う電子状態のジラジカル/イオン性因子による定量化と三次NLO物性の変化を検討した。このモデルは分子間距離とヘテロ原子対を変化させることで電荷の非対称性と面間相互作用を自在に制御しながら、ジラジカル/イオン性因子と三次NLO物性の解析を行った。その結果、中間的なジラジカル性のみならず、中間的なイオン性因子の領域において著しい三次NLO物性の増大が見られることを初めて発見した。この結果は従来開殻性の発現する領域のみに限られていた開殻NLO物質の設計指針を閉殻の領域まで拡張することに対応し、さらにその具体的な解析、設計方法の提案を行うことができたという点で当該領域へ与える影響は大きいと考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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