Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
【背景・目的】これまで日本列島のヒト集団史の推定は主に現代人のゲノムを用いてきたが、古人骨を分析すれば過去の情報を直接的に明らかにできる。しかし、古人骨ゲノム解析を行うには様々な技術的改良が必要となる。そこで本研究では、常染色体の比較的大きな遺伝子座に関してNGSを用いて安価に分析する方法の開発を試みた。この方法で現代の日本列島ヒト集団のゲノム中に存在する東アジア特異的疾患リスク変異が、いつごろ、どこで誕生し、どのように日本列島に入ってきたかを明らかにするため患者および健常者のゲノム解析を実施した。【成果1】申請者は、バクテリア人工染色体(BAC)をベイト(釣り針)として数百kbpの常染色体を濃縮するBACダブルキャプチャー(BDC)法を考案し最適条件を検討した。その結果、BDC法では長さ350‐750bpのベイトを用い、ハイブリダイゼーションを65度で2回行うと高いオンターゲット率が得られた。次に商用キットMYbaitsと比較した。その結果、コスト面ではBDC法がMYbaitsよりも安価だった。データクオリティでは、オンターゲット率はBDC法とMYbaitsはほぼ同値だった。一方、重複リード率はBDCがMYbaitsよりも劣っていた。重複リード率を下げることでBDC法での濃縮効率の向上を達成できる見積で、今後は本手法の古代ゲノムの濃縮への応用を行う。【成果2】東アジア特異的なリスクアレルが報告されているもやもや病感受性遺伝子RNF213を患者集団にてNGSで配列解析し、健常者集団と共に解析した。その結果、リスクアレルを含む配列は均一性が高いことが示された。またそのアレルは約4,500-2,000年前頃に誕生したと推定された。この時期は日本列島における弥生時代の始まりと一致している。よって、リスクアレルが弥生時代に大陸からの渡来人とともに日本列島に拡散した可能性を示唆した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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American Journal of Human Biology
Volume: 29 Issue: 2 Pages: 1-14
10.1002/ajhb.22933
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