Project/Area Number |
15J40107
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Conservation of biological resources
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤原 摩耶子 京都大学, 野生動物研究センター, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2020-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2018)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2018: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2017: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2016: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 卵巣 / 卵子 / 凍結保存 / 体外培養 / 野生動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
希少な野生動物のメスの遺伝資源を保全する生殖介助技術の構築を目指し、モデルとしてイヌとネコの卵巣を用いて、原始卵胞の利用を想定した卵巣皮質の凍結保存と体外発育の研究を行った。 イヌの未成熟卵子の発育能力を保存する卵巣組織の凍結保存方法を検討した結果、DMSOとPVPを組み合わせた凍結保護剤を用いたガラス化凍結法によって、イヌの卵巣組織は未熟な卵巣の生存性および発育能を維持した状態で凍結可能であることを示した。さらに凍結組織をラットへ移植することで、卵胞発育を誘導できることが示された。さらに、イヌの卵巣で有効であった凍結保存条件がネコの卵巣組織にも有効なことを確認した。ネコの卵巣組織については、体外培養研究も論文にまとめた。この研究はレチノイン酸をネコの卵巣組織培養下に添加することで、組織中の細胞外マトリクスのリモデリングを促すMMP9の発現を活性させ、未成熟卵子の発育を誘導できることを示した。さらに、国内の動物園の協力を得て、野生動物の卵巣組織の凍結保存(卵巣バンク)を進めた。これまで、合計で11動物園から32件、19種の野生動物の卵巣を受け入れた。それぞれ卵巣組織の凍結保存を行うとともに、組織解析のための組織固定、分子学的解析のためのRNA保存、タンパク質保存も実施した。すでに解析を一部で実施し、絶滅危惧種であるアムールトラ等、複数の種で正常な形態の卵胞を確認し、良好な状態で凍結保存を実施できたことを確認している。さらに、共同研究者の協力のもと、ニワトリをモデル動物とした未成熟卵子保存のための卵巣組織保存法の開発も進めている。 昨年度は以上の研究成果を論文にまとめ、2報を国際科学雑誌で発表した。さらに、5つの国際学会・国際シンポジウム、5つの国内学会・国内シンポジウムで発表を行い、一般書の執筆、アウトリーチ活動により、社会に向けた情報発信も積極的に実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
イヌの卵巣組織の凍結保存に関する研究は計画以上に進展し、未成熟卵子の凍結保存に有効な凍結手法を確立するだけではなく、移植実験によって、未成熟卵子の発育手法の開発まで進めることができた。さらに、イヌとネコで同じ凍結方法が有効だったことから、この凍結方法はイヌ科、ネコ科の野生動物を始め、多数の動物種に有効である可能性が示された。そのため、より積極的に野生動物の卵巣を動物園から受け入れることができた。特に昨年からは動物園側からより協力を得られる体制になり、卵巣組織バンクの構築を促進することができた。動物園側からの関心も高まり、昨年は動物園関係者が多数集まる学会で2件の招待講演を行った。 さらに鳥類の卵巣保存に関する研究は、当初の研究計画にはなかったが、研究の発展によって実現した新たなプロジェクトである。哺乳類の卵巣組織保存の研究が順調に進展していることから、国内でより絶滅危惧種の多い鳥類の卵巣保存にも取り組むように共同研究者から助言を受けて始まったもので、すでに野生動物の鳥類への応用に向けた話し合いも始めており、研究が進展した成果とも言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もモデル動物(イヌ、ネコ、ニワトリ)を用いた卵巣組織の体外培養、凍結保存の研究を進めるとともに、野生動物への応用も進めることで、幅広い動物種に応用可能な生殖介助技術の開発を目指す。 特に、未成熟卵子の体外発育については、まだ二次卵胞以上への発育は見られなかったため、課題が残った。今後、3次元培養システムの導入など、体外培養条件をより検討し、より発育の進んだ卵胞の獲得を目指す。 また、ニワトリの凍結後の卵巣についても解析を進め、異なる凍結条件が及ぼす未成熟卵子への影響を調べることで、鳥類の卵巣の凍結保存法の確立を目指す。 野生動物への応用研究も推進する。今後、凍結後の野生動物の卵巣について、組織学的・分子生物学的な解析を進め、必要に応じて種ごとに凍結条件を修正する。さらに、凍結後の卵巣組織の体外培養も検討する。また、様々な動物種の卵巣を蓄積する利点を生かした、卵巣凍結における種差についての解析も進めていく。受け入れ研究者の村山教授のご協力で新たな液体窒素タンクも整備し、日本動物園水族館協会との連携も始まったことから、今後より野生動物の卵巣組織バンクを拡充させる計画である
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