Project/Area Number |
15K09448
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Research Field |
Hematology
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
布村 渉 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (70256478)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2016)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2017: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2016: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2015: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | ヒト赤芽球 / CFU-E / 脱核 / グルコース / 解糖系 / ATP / HIF1α / 乳酸脱水素酵素 / 酸素濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト赤芽球は酸素濃度5%以下の低酸素環境下で1日に約2000億個の脱核をして赤血球に成熟する。本研究では、ヒト赤芽球のエネルギー代謝の制御機構を明らかにし、脱核のメカニズムとその生物学的意義の解明を目指している。平成28年度では、解糖系関連分子の発言と翻訳後修飾に焦点を絞りCFU-Eから脱核までの経時的な変化について以下の成果を得た。 (1)ピルビン酸脱水素酵素(PDH)のセリン300番残基は、CFU-Eから脱核まで持続的にリン酸化されていたことから、酸化的リン酸化によるATP産生が抑制されていると考えられた。ヒト赤芽球のPDHリン酸化酵素(PDK)のアイソザイムの中でPDK4は脱核に至るまで強く発現していたが、PDK1は経時的に減少し、PDK2とPDK3の発現は有意に低かった。 (2)グルタミン酸代謝によるATP産生をDONで阻害すると、CFU-Eの増殖は抑制されたが脱核率は変化しなかった。 (3)低酸素誘導因子(HIF1α)の発現阻害による脱核率との関係ついて、KC7F2を用いて解析した。阻害剤の濃度依存性にCFU-Eの増殖及び脱核率が低下したが、細胞内ATP量の有意な減少を認めることができなかった。 (4)乳酸脱水素酵素(LDH)のヒト赤芽球アイソザイムの発現は、赤芽球の終末分化で経時的な変化がなく、また、成熟赤血球と同じくLDHB4を主体とする三種類であった。スチリペントール(LDHA及びLDHBの両方を阻害する)でLDH活性を阻害すると細胞内ATP量の減少に相関してCFU-Eの増殖率と脱核率の低下を認めた。一方、前年度報告したヒドロキシクロロキン(HCQ、自己免疫疾患治療薬)による脱核率の低下は、LDHの活性阻害ではないことが反応速度論的解析から明らかになったことから、赤芽球にはHCQによって細胞分化が阻害される標的分子の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)ヒト赤芽球のCFU-Eから脱核までの終末分化に伴う細胞サイズの変化をFACSによって測定した。細胞内ATP量を細胞サイズで換算したが、終末分化に伴うATP量の減少傾向は変わらなかった。 (2)ヒト赤芽球のピルビン酸脱水素酵素(PDH)のセリン300番残基は終末分化において持続的にリン酸化されていたことが特異抗体による免疫ブロット法で明らかになった。対照としたヒト顆粒球と巨核球ではPDHのリン酸は弱かった。 (3)ヒト赤芽球では、PDHリン酸化酵素(PDK)のアイソザイムの中でPDK4が脱核に至るまで強く発現していた。 (4)低酸素誘導因子(HIF1α)の発現阻害について、細胞内siRNA導入による赤芽球の生存率が低いため、HIF1αの発現阻害剤であるKC7F2を用いて解析した。KC7F2の濃度依存性にCFU-Eの増殖及び脱核率が低下した。KC7F2は細胞形態及びGPAとCD71の発現に影響しなかったが、細胞内ATP量の有意な減少を認めることができなかった。KC7FによるHIF1αの発現量は現在解析中であ。遺伝子発現の抑制技術の確立していないので、遅れが生じている。 (5)LDHA及びLDHBの両アイソザイムを阻害するスチリペントールによってLDHの活性を阻害すると細胞内ATP量の低下と共にCFU-Eの増殖性と脱核率への低下が観察され、細胞内ATP量との相関性が明らかになった。尚、細胞内ATP量はルシフェラーゼアッセイにより求めた。前年度に示したオクサメートによるLDH阻害活性による結果を支持できた。前年度に報告したヒドロキシクロロキン(HCQ)による脱核率の低下は、LDHの活性阻害ではないことが反応速度論的解析から明らかになったことから、赤芽球にはHCQによって細胞分化が阻害される未知の標的分子の存在が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)前年度に引き続き、HIF1αの遺伝子発現抑制(siRNAの導入など)を行い、細胞内ATP量とCFU-Eの増殖性及び脱核率との関係、解糖系関連蛋白質の発現(mRNA及び蛋白質レベル)との関連を明らかにする。ヒト赤芽球への遺伝子導入法については、細胞生存率を向上するための検討が必要である。予備実験としてレンチルウイルスによるGFP遺伝子をCD34+細胞へ導入ができたが、脱核までの細胞生存率を向上に改善が必要である。HIF1αの抑制によって、下流の蛋白質(PDK4、LDH、Glut1など)の発現をmRNA及び蛋白質レベルで解析する。KC7F2以外のHIF1α阻害剤を検討する。全ての阻害薬及び遺伝子発現阻害実験において、細胞形態、GPA及びCD71の発現(FACS)、GATA1 mRNAの発現(qRT-PCR)による対照実験を行う。 (2)PDK4の発現阻害によるPDHのリン酸化度及び細胞内ATP量の変化、脱核率との関係を明らかにする。PDK4の酵素活性をジイソプロピルアミンジクロロ酢酸により阻害して(Yamane et al., PLoS One (2014) e98032)、PDHのリン酸化及び細胞内ATP量と脱核率の相関を解析する。 (3)クエン酸回路或いは酸化的リン酸化の阻害による細胞内ATP量及び脱核率との関係から嫌気的解糖によるエネルギー産生を解析する。また、脂肪酸代謝の阻害を行い、脱核率との関係を解析する。実際に使用する阻害剤は現在検討中である。 (4) PDHのリン酸化度が低い巨核球及び顆粒球を対照にして、赤芽球細胞内アセチルCoA量を定量比較する。 (5)研究全体の総括を行い、論文発表する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)新規にCD34+細胞の精製を行う。 (2)エネルギー代謝関連の遺伝子レベルでの発現抑制実験を継続して最終年度に行う予定であり、そのための試薬(主に分子生物学関係)の確保に使用する。また、各種の阻害剤の検討と細胞培養に必要な試薬類の確保に使用する。
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