Research Project
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
本課題の神経変性変異マウスの遺伝様式が単純にはメンデル遺伝していないことに気づいた。そこで、再度の遺伝子マッピングを行ったところ、ダイニン座位する第1染色体以外にも第7番染色体の遺伝子の関与が示唆された。詳細なマイクロサテライト解析の結果、HPS5というエンドソーム輸送・成熟に関与する遺伝子の異常が存在した場合に、脳の萎縮を伴うことが示唆された。すなわち。今回の変異マウスは、小胞体輸送モーターのダイニンと小胞形成異常の複合要素が原因で表現型を発現していることになる。興味深いことに、HPS5の変異のみを単離すると体色素の沈着が薄くなった。小胞の成熟機構は、メラノソーム成熟異常に繋がるためと予想されるが、小胞輸送が滞るとメラニン合成不全が見た目回復するためと予想される。ヒトHPS変異は、クローン病に代表される炎症性腸疾患を伴う。しかし、今回のHPS5変異では炎症性腸疾患は発現しなかった。そこで、デキストランサルフェート処理でクローン病を発症するか確認したところ、HPS5変異マウスはデキストランサルフェート処理に耐性を示したが、1ヶ月後にクローン病を発症することが明らかとなった。病理解析の結果、肉芽の形成を確認できた。ヒトHPS患者は、神経伝達物質の分泌不全による神経不全及び萎縮が報告されている。今後、HPS5とダイニンの関係解明が期待される。