Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
哺乳類Rif1タンパクの機能は、DNA修復、DNA複製タイミング制御、遺伝子発現制御などが多岐に渡る。本研究ではRif1と関連因子であるCdc7について解析を行った。Rif1は核骨格に強く結合しており、染色体核内構造を維持している。そのため、Rif1欠損により不活性型X染色体の核内配置に影響が生じると考えられた。そこで、雌由来の野生型T細胞およびRif1欠損T細胞を使用して活性型X染色体と不活性型X染色体の核内配置をFISHにて解析した。その結果、予想とは異なり著しい変化は観察されなかった。よって、Rif1は染色体全体ではなく、局所領域の染色体構造を制御していると思われる。次に、DNA複製に必須なリン酸化酵素であるCdc7とRif1との関係について解析を行った。Cdc7単独欠損MEF細胞ではDNA複製が行われず、細胞周期S期の停止が観察された。一方、Cdc7 / Rif1二重欠損MEF細胞では、S期停止が解除され細胞周期が進行すると同時にDNA複製能も回復した。この事実は分裂酵母で得られた知見と一致しており、恐らく酵母から動物細胞まで共通の性質であると考えられる。次に脳特異的 Cdc7 欠損マウスの解析を行い、分化過程におけるCdc7の役割について解析を行った。生後直後のCdc7欠損マウスでは、脳の層構造形成の異常が観察され、成長と共に行動異常や脳の萎縮などが観察された。一方、血球特異的にCdc7を欠損させたT細胞では、見かけ上著しい変化は観察されなかった。以上の事から、Cdc7欠損によりES細胞やMEF細胞は複製の異常が生じるが、ある特定の組織あるいは遺伝的背景の細胞では、Cdc7非存在化でもDNA複製を行う方法を持っている可能性が示唆された。
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