Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
ラットくも膜下出血モデルとしていくつかのモデルが報告されているが、主として大槽内血液注入モデル及び血管穿通モデルが挙げられる。申請者は本プロジェクトを遂行するために、血管穿通モデルがすでに確立されている三重大学脳神経外科学教室(Suzuki et al., Ann Neurol 2010)を複数回訪ね、血管穿通モデル並びにIndia-Ink angiography を用いた脳血管攣縮評価方法を学んだ。ラットに確実にくも膜下出血を発症させ、かつ発症後の生存率を上げるために、体位、麻酔深度、穿通する糸の太さや先端形状の工夫をすることで、このモデルが当教室でも使用できるようになった。このモデルを用いた実験で、くも膜下出血発症24 時間後の中大脳動脈において、India-Ink angiographyにて脳血管攣縮が誘発されている所見を認めた。組織学的評価では血管平滑筋の肥厚並びに血管内腔の狭小化を認め、その血管内皮細胞に強くRAGE(終末糖化産物受容体)が発現していることも確認された。さらに、ラットにおけるくも膜下出血発症群とコントロール群の血中sRAGE(分泌型RAGE、decoy receptorとして作用)値を連続して測定したところ、くも膜下出血群ではコントロール群と比較して血中sRAGE値が経時的に低くなる傾向が確認された。これらの所見はくも膜下出血後脳血管攣縮にRAGEが関与していることを示唆する所見であると考えられた。