Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
これまでに当研究室では心筋細胞の移植医療を目的としてiPS細胞からの安価かつ高効率(心筋純度97%以上)で病原性の低い心筋細胞誘導法を開発した。しかし、この誘導法は普遍的ではなく、誘導効率はiPS細胞株、培養方法等の要因に影響される。将来、患者由来のiPS細胞から心筋細胞を作成して移植を行う場合、効率良く心筋細胞を作成するためには心筋分化能の決定因子の解明が必要である。そこで複数のiPS株の遺伝子発現をマイクロアレイを用いて比較し、心筋誘導効率の高い細胞株に共通して発現する遺伝子および、発現を調節するエピジェネティック修飾の探索を目的とした。この分化能決定因子は心筋分化効率の向上を通して移植医療の実現と円滑化に貢献する。初めにiPS細胞株253G1系を2つの異なる方法で未分化維持培養し、その後に心筋分化誘導を行った。一方はMEFをフィーダー細胞として用いた接着培養法で未分化維持をした。もう一方は未分化細胞を球状のコロニーとし、メチルセルロースを含んだ培地中で維持する非接着浮遊培養系である。分化誘導と心筋成熟20日後、それぞれの心筋細胞純度は、フローサイトを用いて心筋分化マーカーcTNT(心筋トロポニンT)陽性細胞数の割合を計測した。得られた解析結果から心筋純度90%以上を高効率とした。その未分化株を拡大培養したのち、遺伝子発現の定量解析、エピジェネティック解析のためDNAおよびRNAを回収した。