Research Abstract |
生殖腺分化前のニワトリ初期胚(2〜5日胚)から作成した雌マイナス雄サブトラクションcDNAマイクロアレイから雌特異的発現の著しいクローンを網羅的に検索し,それらの中からW染色体由来のクローンを特定し,遺伝情報ならびに発現特異性の解析を進めた.W染色体上の遺伝子由来と考えられる4種類のcDNAクローンのうち未知の遺伝子に由来すると推定された新規遺伝子2d-2D9,2d-2F9について,性決定,性分化初期過程における役割を追求した. 1.2d-2D9,2d-2F9遺伝子のw染色体上の局在部位の解析 FISH解析の結果,両遺伝子はW染色体短腕のSspI-family反復配列より末端側の非反復配列領域に存在していた.この領域には,ASW/PKCI-W, SPIN-W, EFT-1遺伝子が存在し,W染色体上で活性遺伝子が集中している領域であることから,両遺伝子は機能を持つ遺伝子と考えられた. 2.2d-2D9,2d-2F9の塩基配列情報の解析 2d-2D9の塩基配列はデーターベース上には有意な相同生を示す遺伝子配列は見いだせず,染色体リンケージ未知のContig5115.3と高い相同生を示し,これまでに知られていない遺伝子と推定された.2d-2F9は染色体リンケージ未知のContig1279.1の配列と高い相同生を示し,さらにBLAST検索により哺乳類で保存性の高いVCP(valosin-containing Protein)の3'側1kbと高い相同生を示した.これまで鳥類におけるVCP関連遺伝子の報告はなく,この遺伝子機能,タンパク質機能を性決定,性分化の観点から解析する事が重要である. 総括 本研究によりニワトリ2日胚W染色体由来cDNAクローンの解析結果から2種の新規遺伝子2d-2D9,2d-2F9が始めて見だされた.両遺伝子は生殖腺分化が始まる以前の孵卵2日の初期胚で発現し,さらにW染色体短腕の非反復配列領域に局在している.従って,これら遺伝子の発現時期や発現部位の解析,およびZ染色体上の関連遺伝子との比較解析が,ニワトリの性決定・性分化機構における性染色体(ZZ/ZW)の役割解明を可能にする最重要課題と考えられる.本研究の成果は,Yamada D, Koyama Y, Komatubara M, Urabe M, Mori M, Hashimoto Y, Nii R, Kobayashi M, Nakamoto A, Ogihara J, Kato J & Mizuno S, (2004) Comprehensiv search for chicken W chromosome-linked genes expressed in early female embryos ffrom the female-minus-male subtracted cDNA macroarray. Chromosome Res 12:741-754.として,発表した.
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