Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
インフルエンザウイルスは、ウイルス粒子表面にレセプター結合活性をもつHAとレセプター破壊活性をもつNAと呼ばれる2種類の糖蛋白質をもっている。これまでの研究から、インフルエンザウイルスでは、宿主免疫からの回避に主要抗原であるHA球状部の糖鎖の数と分布が大きな影響を与える可能性が浮かび上がってきた。この可能性を検証するのが本研究の目的である。インフルエンザA/H3N2ウイルスは、1968年の出現当時にはHAの球状部に2本の糖鎖をもつにすぎなかったが、1997年の分離株は6本の糖鎖をもつに至っている。そこで、本研究では1968年の出現当時に分離されたウイルスのHAを鋳型にして分離株と同じ位置に新たに糖鎖付加部位を導入し、HAの生物活性と抗原性に及ぼす糖鎖付加の影響を検討した。本年度は、リバース・ジェネティクスを用いて、上記の変異HAをもつ人工A/H3N2ウイルスの作成を試みた。その結果、1〜5ヶ所の糖鎖付加部位をもつ変異HAウイルスの作成に成功した。しかし、そのうち4〜5ヶ所の糖鎖付加部位をもつ変異HAウイルスでは、NAにアミノ酸変異が起こっていた。また、A/Aichi/2/68株に対するポリクローナル抗体と各変異HAウイルスとの反応性を調べた結果、特に246位に糖鎖付加部位をもつ変異HAウイルスでは、野生型ウイルスと比べて著しく反応性が低下していた。以上の結果から、A/H3N2ウイルスはHA蛋白球状部への糖鎖付加により、生物活性に致命的な影響を与えることなく抗原性を変化させることによって、効率よく宿主免疫から回避していると考えられた。また、HA球状部への糖鎖付加に伴ってNAにアミノ酸変異がみられたことから、両蛋白のレセプター結合及びレセプター破壊活性のバランスがインフルエンザウイルスの増殖に影響を及ぼす可能性が示唆された。
All 2006 2004
All Journal Article (2 results)
感染・炎症・免疫 35
Pages: 322-325
Journal of Virology 78
Pages: 9605-9611