Budget Amount *help |
¥9,000,000 (Direct Cost: ¥9,000,000)
Fiscal Year 2005: ¥4,500,000 (Direct Cost: ¥4,500,000)
Fiscal Year 2004: ¥4,500,000 (Direct Cost: ¥4,500,000)
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Research Abstract |
研究代表者は、tRNA修飾酵素の研究から、抗生物質のターゲットとして最もふさわしい酵素を発見した。ライシジン(Lysidine;L)は側鎖にリジンを持ったシチジンの誘導体であり、バクテリアのAUAコドンを解読するイソロイシンtRNAに特異的に存在する。Lはアンチコドン1字目に存在し、tRNAが転写後にCからLへ修飾されることで、遺伝暗号解読能がAUGからAUAへと変化すると同時に、アミノ酸受容能がメチオニンからイソロイシンへとスイッチすることが知られている。したがって、AUAコドンの翻訳にはLの修飾が不可欠であり、Lを合成する修飾酵素遺伝子も必須遺伝子である。我々は3年程前から、機能未知遺伝子群の中から網羅的にRNA修飾遺伝子を同定するプロジェクト(リボヌクレオーム解析)を開始し、ライシジン合成酵素遺伝子(tRNA^<Ile> lysidine synthetase=tilS)を同定することに成功した[Mol Cell, 12,689-698.]。この遺伝子は必須遺伝子であり、全てのバクテリアに共通に存在する。またヒトを含め動物には存在しないことが知られている。したがってこの遺伝子あるいは酵素を阻害する薬剤は、原理的に最も副作用の少ない抗生物質であると考えられる。今年度は、ライシジン合成酵素TilSによるライシジン生合成の触媒メカニズムを詳細に検討した結果、二段階の独立した反応で構成される事を明らかにした[Ikeuchi et al., Mol Cell, 19,235-246(2005)]。また、TilSによるtRNAの基質認識機構を解析した結果、TilSはイソロイシンtRNAのアンチコドンループとアクセプターステムの2つの塩基対合(4-69/5-68)を厳密に認識することを明らかとした。さらに、東工大の濡木理教授との共同研究により、Aquifex aeolicusのTilSの結晶構造を明らかにし[Nakanishi et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 21,7487-7492(2005)]、TilSとATP,リジン、tRNAとの相互作用様式が推定された。これらの基礎的研究は、Tilsの阻害を作用機序とした抗生物質の開発に有用な知見である。
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