Budget Amount *help |
¥9,100,000 (Direct Cost: ¥9,100,000)
Fiscal Year 2005: ¥4,100,000 (Direct Cost: ¥4,100,000)
Fiscal Year 2004: ¥5,000,000 (Direct Cost: ¥5,000,000)
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Research Abstract |
本年度は超音波音速測定装置を新しく立ち上げ,また,基準振動解析用コンピュータを整備し,実験・理論両面から種々の蛋白質系の構造・圧縮率・機能相関について調べた。得られた成果の概要を以下に示す。 ウシすい臓リボヌクレアーゼA(RNase A)を消化切断したリボヌクレアーゼS(RNase S)は,S-ペプチド(1-20残基)とS-プロテイン(21-124残基)の複合体であるにもかかわらず,その二次構造は切断前とほとんどかわらず,活性も80%程度保存されている。これらの断熱圧縮率は,RNase A>RNase S>S-プロテインの順に減少し,基準振動解析から得られた等温圧縮率の順序と一致した。このことから,20-21位での切断により分子全体のゆらぎはむしろ減少し,機能の低下をもたらしたものと考えられる。 基準振動解析により蛋白質のアミノ酸置換による等温圧縮率の違いを計算した。細胞壁分解酵素のリゾチームにおいて,ニワトリなどのキジ目(Galliforms)の蛋白質のアミノ酸配列には,コアを構成するThr40,Ile55,Ser91およびSer40,Val55,Thr91のいずれかのみが現存している。そこで本研究では,両者の野生型と,進化的中間体として可能性のある5種類の変異体について,それらの結晶構造をもとに基準振動解析により等温圧縮率を計算し,分子進化におけるゆらぎの役割について考察した。現存するニワトリとコリンウズラの野生型リゾチームには,各波数領域において同程度の体積のゆらぎが観測され,分子全体の等温圧縮率も一致することがわかった。しかし進化的中間体ではいずれも等温圧縮率は大きく,ゆらぎの大きい構造であったと推測される。また,これらの進化的中間体の等温圧縮率と酵素活性の間には正の相関がみられ,ゆらぎは機能発現に有利に働いていることが示唆された。
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