Budget Amount *help |
¥5,800,000 (Direct Cost: ¥5,800,000)
Fiscal Year 2005: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2004: ¥4,900,000 (Direct Cost: ¥4,900,000)
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Research Abstract |
本研究では「生体高分子の構造形成とその記憶・タンパク質の折り畳み」の解明を目標として,「ヘテロ高分子ゲルの水中での構造形成と水和構造のダイナミクス」を解明することにある。生体内で働く分子間(あるいは分子内)相互作用のうち疎水性相互作用は水和構造ならびに水分子のダイナミクスと密接に関係しており,その理解を目的に検討を行い本年度は以下の成果を得た。 1.疎水性相互作用により体積相転移を起こす熱感応性のPoly(N-isopropyl-acrylamide)(PNIPAM)ゲルに対する塩依存性(NaCl, KCl and CsCl)の検討を行った。ゲル膨潤度実験から相転移挙動は塩濃度に強く依存し,高分子の疎水性水和に関連していることが示唆された。水および塩水溶液の低波数ラマン散乱から得られる水もしくは塩水溶液の特性値(i.e.緩和時間τ_<MRT>,変調速度α_0)の変化から,PNIPAM周囲の水和構造は塩の存在によって破壊され,その結果PNIPAMゲルが収縮することが明らかになった。さらにPNIPAMゲルの相挙動は,水の化学ポテンシャルを秩序パラメータとして記述できることを明らかにし,解析的な理論を構築した。化学ポテンシャルは転移点ではほぼ一定であるのに対して,水もしくは塩水溶液の特性パラメータ(i.e.緩和時間τ_<MRT>,変調速度α_0)は塩濃度の増加,もしくは温度の上昇により変化し,PNIPAMゲルのの相挙動は水和の程度で記述され,化学ポテンシャルにより制御されていることが明らかとなった。 2.疎水性相互作用によりcoil-globule転移を起こす熱感応性のPoly(N-isopropyl-acrylamide)(PNIPAM)およびPoly(ethyleneglycol)(PEG)から構成される分子量分布の比較的狭い(M_w/M_n=1/3)水溶性ジブロック共重合体(PNIPA-block-PEG)を調製し,その構造形成を主に中性子小角散乱法,動的光散乱,蛍光分光法による幅広い空間スタールでの微視的構造の解明および,その水分子の役割について検討を行った。その結果,通常疎水性相互作用によるPNIPA鎖のcoil-globule転移は32℃付近に臨界点を持つが,PNIPA-block-PEGでは約17℃付近で,水がneutral solventからselective solventに性質を変化させ,PNIPAブロックが収縮を始め,PEGブロックが膨潤した状態を保つ,非対称的な膨潤状態になることが明らかとなった。この時PNIPA-block-PEGは短距離的かつ液体的秩序を持ったミセル様構造をとり,更に疎水性相互作用による構造化が進行するとPNIPAブロックの脱水和によるマクロ相分離の結果,ネットワーク状構造を形成することが明らかとなった。このPNIPA-block-PEGの特異な挙動は,ブロック的な分子構造により,より親水的なPEGブロックによりバルクの水のエネルギーが上昇し,そのためPNIPAブロック周囲の水性疎水和構造が破壊され,coil-globule転移温度よりも低い温度で水がselective solventに変化したものと考えられる。
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