Budget Amount *help |
¥3,300,000 (Direct Cost: ¥3,300,000)
Fiscal Year 2005: ¥200,000 (Direct Cost: ¥200,000)
Fiscal Year 2004: ¥3,100,000 (Direct Cost: ¥3,100,000)
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Research Abstract |
首都大学東京(日野キャンパス)において,年間を通じて毎月1週間毎の降水,エアロゾル,大気中揮発性有機化合物(VOCs)の同時連続採取を行った.さらに,富士山山頂(3776m)と富士山中腹(太郎坊避難小屋,1300m)で2005年7月13日から17日まで,降水(雨,霧,露)とともに大気中VOCsの集中観測を行った.また,本年度は,昨年まで測定を行ってきた塩素化炭化水素(16種),単環芳香族炭化水素(7種)などのVOCsに加えて,多環芳香族炭化水素(PAHs)のうちで揮発性が高く,主にガス態として大気中に存在しているナフタレン類(3種)の二環芳香族炭化水素の観測も開始した.以下に,本年度得られた結果の概要を示す. 1)大気微小液滴への微量有機汚染物質の濃縮機構 大気中VOCsの観測とともに,雨水および露水中のVOCs濃度,フミン様物質(HULIS),溶存有機炭素(DOC),表面張力,主要無機イオンの測定を行い,大気微小水滴への大気中VOCsの濃縮機構を検討した.フミン様物質の定量には,河川水中フミン物質の定量法としてHiraide et al.(1994)によって開発された方法を改良して用いた.降水中HULIS濃度は雨水に比べて露水で約20倍濃縮されていた.降水中HULISは雨水,露水ともに春先に高濃度になることから,フミン様物質の起源として,花粉や黄砂などの春先特有の現象が関与している可能性があるが,カリウムイオンとの相関性から花粉など植物起源の可能性が高い.露水および雨水中VOCsは,大気中VOCs濃度とヘンリー則から推定される予測値に比べて数百倍以上濃縮されているが,このうち,トルエン,キシレンなどの単環芳香族炭化水素は単位総無機イオン濃度当たりのフミン様物質濃度が増加するにつれて濃縮されることが明らかになった. 2)大気微小液滴内での微量有機汚染物質の増感光分解 試薬から調整した模擬露水(VOCsのみの場合,VOCs+フミン酸(溶存態),VOCs+フミン酸(懸濁態))を晴天時に本学講義棟屋上に設置して実際の太陽光を照射することにより,VOCsのフミン様物質による増感光分解反応について検討した.ジクロロメタンを除く塩素化炭化水素,単環芳香族炭化水素はフミン物質の増感光分解効果はあまり明瞭ではなかったが,二環芳香族炭化水素であるナフタレン類ではフミン物質による増感光分解効果により水中で消失することが明らかになった.ジクロロメタンはフミン酸存在下での太陽光照射により生成がみられたが,ジクロロメタンが生成する原因は明らかにすることができなかった.今後,降水やエアロゾルから精製した大気中フミン様物質を用いて屋外実験と室内実験を行うことにより,有害有機大気汚染物質のフミン様物質による増感光分解反応について明らかにする必要がある.
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