Research Abstract |
ギリシア・ローマの詩人達のうち、ホラティウス(Horatius, 65-8BC)に注目し、この詩人がイギリスの詩人ジョン・ドライデン(John Dryden, 1631-1700)に与えた影響の研究を行った。 ドライデンのホラティウス翻訳は3編を数えるが、まず『歌章』(Carmine)から第3巻29歌を取り上げた。この29歌は、古来より親しまれてきた作品であるが、このドライデンが行った翻訳の様式を細緻に分析し、そして、これがsynthesisと呼ばれるに相応しい特質をもつ翻訳であることを指摘した。 また、ホラティウスと比較検討する意味で、ドライデンのオヴィディウス(Ovidius, 43 BC-18 AD)にも注目した。オヴィディウスの「変身物語」中のBaucis and Philemonのエピソードに関連し、このエピソードのドライデン訳をとりあげ、この翻訳の中でドライデンが付加した、nor once look backward in your Flightという一行のもつ意味を解明した。 また、ドライデンの翻訳と関連し、1733年にThe Gentleman's Mazagineに公表されたホラティウスのオード(III,ix)の英訳をとりあげ、この「翻訳」が18世紀前半という時代的な背景のもとになされた、風刺的な特質をもつ作品となっていることを解き明かした。 なお、3つの古典語の読書会(ギリシア語、ラテン語、及びイタリア語)は、計画書の通りに進行した。つまりギリシア悲劇からはソフォクレスの「オイディポス王」を、ラテン詩からはホラティウスの「歌章」を、また、イタリア語古典からはアリオストの「狂えるオーランド」を読み続けた。
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