Research Project
Grant-in-Aid for Exploratory Research
【緒言】水-油-水3相液膜系の片側水相に界面活性剤を加えると、液膜間電位が振動する。しかし、電位振動の原理や添加物質が振動機構に与える具体的な影響については完全に解明されていない。そこで本研究では、代表的な3相液膜系であるオクタノール液膜系における電位振動現象をモデル化し、電位振動波形を再現した。さらにこのモデルを用いて、添加物質としてNaClが振動機構に与える影響について検討した。【方法】左側水相にドデシル硫酸ナトリウムとエタノールを含む水溶液、右側水相に蒸留水、油相にテトラブチルアンモニウムクロリドを含む1-オクタノール溶液を用いて、水-オクタノール-水液膜間電位を測定した。また、右側水相にNaCl水溶液を用いた場合も同様に測定した。現象のモデル化では、吸着過程に実測した電位を代入し、脱着過程にFick拡散方程式とLangmuir-Hinshelwood式を用いた。モデルにより算出された計算値と実験による電位振動波形をフィッティングさせて、電位振動波形を再現した。【結果および考察】蒸留水系もNaCl水溶液系も、数十分間の誘導時間のあとに電位振動が起こった。また、両者は誘導電位、電位振動の振幅および振動数が異なった。電気振動モデルを実験による電位振動波形にフィッティングしたところ、蒸留水系もNaCl水溶液系も供に良く一致した。フィッティングパラメータの検討により、油相中の界面活性剤イオンは非常にゆっくりと界面に吸着することがわかった。また、NaClの存在で、右側界面に吸着した界面活性剤イオンの水相側への脱着速度定数が著しく低下した。これは、Na+の遮蔽作用により右側界面に吸着した界面活性剤イオン同士の反発力が軽減するのが要因だと考えられる。【結言】本モデルを用いると電位振動波形を再現することができた。また、本モデルからNaClが振動機構に与える影響を解析できた。