Budget Amount *help |
¥3,100,000 (Direct Cost: ¥3,100,000)
Fiscal Year 2006: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2005: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
Fiscal Year 2004: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
口腔癌などの固形癌において,特徴的な微小環境として低酸素・低栄養が広く認識されている。同環境下では,酸素感知・供給維持システムが腫瘍の発生や増殖・進展さらに治療抵抗性にも密接に関わっていると考えられており,その詳細な分子機構の解明が望まれている。低酸素応答は主に,転写因子HIF-1により誘導される遺伝子発現変動により制御されていると考えられている。しかしながら,低酸素下における治療抵抗性に関わる遺伝子発現変化等の分子機構は不明であり,同機構の解明を本研究の目的とした。 これまでに,口腔癌細胞株(HSC2,HSC3,HSC4,Ca9-22,KOSC2,HO-1-N-1,HO-1-u-1,KB)を通常酸素下(21%pO2)および低酸素下(1%pO_2)にて培養し,MTT法により,CDDP,5-FU, CPT-11,L-OHPの感受性変化について検討した。また,Western blottingによるHIF-α,Arnt蛋白発現,オリゴアレイによる網羅的遺伝子発現解析,real-time RT-PCRによる既知の低酸素応答遺伝子(CA9,VEGF, DEC1,DEC2,SLC2A1)発現誘導やHRE-luciferase reporter遺伝子導入によるHIF-1活性化能を比較した。結果,多くの細胞株において低酸素下で抗癌剤感受性の低下が認められたが,その程度は細胞株,抗癌剤により異なっていた。また,低酸素刺激により全ての細胞株にてHIF-1α蛋白,機能の誘導が認められたが,その誘導能は様々であった(レポーター遺伝子誘導能は2.4〜8.5倍)。これらの中でHSC2が最も低酸素応答性が高かったため,同細胞を用いて網羅的遺伝子発現解析をオリゴアレイ(19881 probes)にて行った。低酸素下培養による2倍以上の発現亢進は2638プローブに,2/3以下への発現低下は2881プローブに認められ,既知の低酸素応答遺伝子以外にも多くの未報告遺伝子が含まれていた。大変興味深い事に,発現低下遺伝子群にDNA修復遺伝子が多く含まれていた。ミスマッチ修復に関わる3遺伝子,塩基除去修復の5遺伝子,相同組み替え修復の9遺伝子やヌクレオチド除去修復の5遺伝子の発現低下が観察され,低酸素環境下においてDNA修復機構が組織的に抑制されている可能性が示され,低酸素下における治療抵抗性獲得機構との関わりに興味が持たれた。
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